ドップラ効果:基礎と概要

音のドップラ効果という現象は、日常生活でも体験できます。パトカーがサイレンを鳴らしながら横を通り過ぎます。その時、サイレンの音は、パトカーが近づくにつれて高く、遠ざかるにつれて低くなります。音源は変化しませんが、音は音源の移動によって「圧縮」または「引き伸ば」されます。これがまさにドップラ効果です。クラクションを鳴らしながら車が通り過ぎるときも同じことが起こります。最初はクラクションの音が高く、車が通り過ぎると徐々に低く聞こえます。これはドップラ周波数シフトと呼ばれ、この関係を初めて記述したオーストリアの物理学者クリスチャン・ドップラにちなんで名付けられました。そして、レーザドップラ振動計はまさにこの現象を利用しています。しかし、レーザドップラ振動計は光学的に測定しているのではないでしょうか?

光のドップラ効果

光学式振動センサの測定原理を理解するには、まずドップラ効果による現象を光波に当てはめる必要があります。光線が移動する物体によって反射されると、その周波数は物体の速度に比例して変化します。この周波数変化には、レーザドップラ振動計が測定信号として使用する速度情報が含まれています。

周波数シフトをどのように測定しているか?

測定原理は最新の干渉法に基づいています:

  • レーザビームが測定光と参照光に分割されます
  • 測定光が物体に当たり、物体の動きに応じた周波数シフトを伴って反射されます
  • 反射された測定光と参照光は検出器内で重ね合わせられます(干渉)
  • その結果生じる検出器信号上の変調は、物体速度を直接的に関連した測定値となります。


これにより、接触や質量負荷といった測定点への影響なしに、接触式センサを取り付けるのが困難な場所やアクセスできない場所における、微小振幅または高周波数の振動を正確に検出することが可能です。

強力なデジタルデコーディング技術により、この周波数シフトは振動速度に比例したデジタル信号またはアナログ電圧信号に変換されます。これらの信号は、標準的なデータ収集システムで容易に処理が可能です。

速度情報は周波数シフトに関連しているものの光強度とは無関係であるため、ドップラ効果を応用したこの測定原理は、反射率が非常に低い対象物の測定にも適しています。

ドップラ効果に関する数式

ドップラ効果の数式は、波の発生源が観測者に対して相対的に移動する際に、波の周波数がどのように変化するかを記述しています。一般的な式は以下の通りです;

  • f' = f * (v + vo) / (v - vs) —  (互いに近づく動きの場合)
  • f' = f * (v - vo) / (v + vs) —  (互いに遠ざかる動きの場合)
  • f' は観測者が知覚する周波数
  • f  は発生源の周波数
  • v は波の伝播速度(例:音速)
  • vo は観測者の移動速度
  • vsは発生源の速度
     

(レーザドップラ振動計の場合のように)波が移動物体に反射され、その後測定システムによって検出される場合、測定される周波数シフト fD は以下のようになります:

fD = 2· v/λ 

ここで、v は物体の速度、λ は元の波の波長です。よって物体の速度 v は、元の波長 λ が既知である場合、(ドップラ)周波数シフトを測定すれば求められます。レーザドップラ振動計は搭載された干渉計を用いて、この測定を行っています。

ドップラ効果の実用化:レーザドップラ振動計測

レーザドップラ振動計 (LDV) は、ドップラ効果に基づく高精度測定技術であり、 様々なアプリケーション分野で活用されています。音の代わりにレーザ光を用いることで、物体の微細な振動や動きを非接触で測定できます。
 

測定原理

レーザ光を振動する物体、例えば機械、膜、あるいは人間の皮膚などに向けて照射します。物体が移動すると、光学ドップラ効果により反射光の周波数がわずかに変化します。

この周波数の変化を測定し、そこから移動速度や変位を算出することが可能です。

 

レーザドップラ振動計の利点

従来の測定方法と比較して、レーザドップラ振動計は振動解析するにあたり、いくつかの利点があります。精密な周波数・振幅測定、柔軟性、完全な非接触測定手法であることです。これにより、動的プロセスを調べる必要がある開発、品質保証、基礎研究において重要なツールとなります。生産ライン用途においては、マイクロフォンを用いた場合に必要となる、高価な防音対策が不要になります。これにより、例えば品質管理が大幅に効率化されます。測定対象物を特別な試験室に設置する必要がなくなり、サイクルタイムの増加を防ぐことができるためです。

無料デモでレーザドップラ振動計測計を実際に体験できます!

ドップラ効果の一般的な応用技術例

振動測定技術に加え、ドップラ効果は数多くの技術分野で活用されています:

Doppler effect in traffic monitoring and radar
Optical measurement technology for automotive industry

交通監視とレーダー

速度測定装置による車両速度の測定

気象学

降水量と風速を測定するためのドップラレーダー

Doppler effect in astronomy

天文学

恒星や銀河の放射速度(赤方偏移/青方偏移)の測定

Doppler effect in medicine
Optical measurement technology solutions for Biology and Medicine

医療診断

血流測定のためのドップラ超音波検査

ドップラ効果が振動測定手法に新たな未来をもたらした

レーザドップラ効果は、レーザ振動計による高精度な振動測定の物理的基礎となっています。この技術は、物理学で知られている(日常的な)現象であるドップラ効果を、現代の産業や科学の分野に応用することに成功した素晴らしい例です。

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